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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(オ)482号 判決 1953年9月17日

東京都港区赤坂新坂町六四番地

上告人

池田宇善

右訴訟代理人弁護士

浅野松次郎

同都豊島区日の出町三丁目一七四番地

被上告人

金井義雄

右当事者間の不動産所有権移転登記請求事件について、東京高等裁判所が昭和二八年四月二三日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨は、単なる訴訟手続違背の主張であつて、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。なお、当事者の申し出た証拠が唯一の証拠方法でないときは、特に証拠申出の許否を決定することなく結審した場合には、その申請を却下した趣旨と認められるから違法でないことは、当法廷の判例であるから、(昭和二七年一二月二五日判決民事判例集六巻一二号一二四〇頁以下参照)所論第一点は、その理由がないし、また、所論の甲六、七号は原判決が事実認定の証拠資料としなかつたものであるから、所論第二点も採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

昭和二八年(オ)第四八二号

上告人 池田宇善

被上告人 金井義雄

上告代理人弁護士浅野松次郎の上告理由

一、原審判決ハ法律ニ違背シタル違法アルモノデアル

(イ) 原審ニ於ケル第二回ノ口頭弁論(昭和二十七年十二月八日)ニ於テ被上告人ハ証人今井直勝、梅村保雄、野萩康雄、片山守哲ノ四人並ニ被上告人本人ノ尋問ヲ申請シタルトコロ右ノ内証人梅村保雄、野萩康雄ハ許可トナリ続ヒテ第三回ノ口頭弁論(昭和二十八年二月十日)ニ於テ上告人ヨリ証人早田素朗並ニ上告人本人ノ尋問ヲ申請シタルトコロ右ノ内証人早田素朗ハ許可トナリ其他ノ証人今井直勝、片山守哲並ニ被上告人本人及上告人本人等四人ハ採否ノ決定ヲ留保セラレテ未決定デアツタノデアル然ルトコロ原審ハ第四回ノ口頭弁論(昭和二十八年四月九日)ニ於テ曩ニ許可トナリタル証人ヲ尋問シタル後採否ノ決定ノ留保トナツテオル前記ノ四人ノ証人及本人等ノ証拠調ノ申請ニ対スル許否ノ決定ヲ為サズ未決定ノ儘ニテ口頭弁論ヲ終結シ判決ヲ言渡シタノデアル之レハ明カニ法律ニ違背スルモノデアル民事訴訟法第二百五十九条ニハ「当事者ノ申出タル証拠ニシテ裁判所ニ於テ不必要ト認ムルモノハ之ヲ取調フルコトヲ要セズ」トアリテ当事者ノ申出タル証拠ノ申出モ裁判所ノ自由ナル判断ニヨリ採用セザルコトハ素ヨリ違法ニアラザルモ右第二百五十九条ハ証拠ノ申出ニ対スル採否ノ決定マデモ省略スルコトヲ認容シタルモノニ非ラズ従テ裁判所ハ当事者ヨリノ証拠ノ申出ニ対シテハ其採否ノ決定ヲ為サネバナラナイ本件ノ如ク証拠ノ申出ニ対スル採否ノ決定ヲ為サズシテ其採否ノ決定ヲ留保ノ儘ニテ口頭弁論ヲ終結シ判決ヲ言渡ス如キハ明カニ法律ニ違背スルモノト信ズ

(ロ) 原審ハ第二回ノ口頭弁論ニ於テ被上告人ガ提出シタル甲第一号証乃至甲第七号証ノ書証ニ付第三回ノ口頭弁論ニ於テ上告人ガ甲第一号証乃至甲第五号証迄ノ認否ヲ為シ甲第六号証以下ハ次回ニ認否スル旨陳述シタルニ原審ハ第四回ノ口頭弁論ニ於テ該認否ヲ上告人ニ求メズ認否未済ノ儘ニテ弁論ヲ終結シタルハ違法ナリトス

以上

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